首都圏外郭放水路とは、春日部とその周辺地域における複数の河川から溢れ出した水を取り込んで江戸川へ放水し、街を洪水から守るために造られた世界最大級の地下放水路。このたび最も下流に位置する第1立坑と調圧水槽を見学してきました。
立坑は全部で5つ
総延長6.3kmの首都圏外郭放水路に設けられた立坑は全部で5つ。深さ約70m、内径約30m(第5立坑のみ15m)の巨大な穴は、各河川から溢れた水を地下トンネルに取り込む役割を果たすと共に、管理車両の搬入や換気設備の取り付けなど、放水路の維持管理にも使われます。また、工事時はトンネルを掘るためのシールドマシンの基地として使用されました。
上から見ると、調圧水槽への入口がよく分かります。また、写真では伝わりにくいですが怖いくらいに高いので、高所恐怖症の方には厳しいと思われます。
ちなみに、今回見学していない最上流の第5立坑と中間の第3立坑では、流入に渦流式ドロップシャフトが採用され、立坑の壁面に沿って水が流れ落ちるように流入口の形を変形し、60メートル落下する水が底盤へ与える衝撃を緩和する対策が施されているそうです。
地下神殿こと調圧水槽の内部へ
第1立坑と接続された調圧水槽は、幅78m、奥行き177m、高さ18mの巨大プール。地下トンネルから流れてきた水の勢いを弱め、排水機場へスムーズに水を流す役割を果たします。ここへ行くためには地上入口から116段の階段を昇降する必要があり、なかなか疲れます。しかし入口から30段ほど降りたあたりから急に涼しくなり、空気が変わる様子が感じられるので、その意味ではむしろエレベーターではなく徒歩でよかったと思いました。
天井を支えるコンクリート製の柱は全部で59本。1本あたりのサイズは奥行き7m、幅2m、高さ18mで、重さは約500t。ライティングの効果もあって神秘的な雰囲気が感じられることからテレビや映画のロケ地としても有名で、最近では翔んで埼玉でも使われたようです(観てないけど)。
これだけの荷重がないと地下水によるアップリフト(揚圧力)により調圧水槽が浮き上がってしまうのだそうです。自然の力、水の力が如何に大きいかが分かりますね。
江戸川放水路と言えばハゼ釣り
神奈川県で暮らす自分にとっては春日部も江戸川も馴染みのない存在ですが、唯一の接点としては毎年の恒例行事となりつつあるハゼ釣りの釣り場が江戸川放水路の河川敷(千葉県市川市)にあること。Googleマップで調べてみると、釣り場から約40km上流に首都圏外郭放水路の龍Q館がありました。
梅雨や台風などで洪水が発生した際は首都圏外郭放水路を経由した水がこの釣り場まで流れてきているわけで、越冬したヒネハゼならその水を経験しているかもしれません。今年もまたハゼ釣りに行ったら、首都圏外郭放水路のことを思い出すことでしょう。
五反田川放水路も気になる
「思い出す」と言えばもう一つ。3年前に書いた五反田川放水路の記事を思い出しました。工事期間は平成31年3月25日までの予定だったので、すでに完成していることでしょう。最近はこのあたりへ行っていないので、天気が良い日にでも自転車で訪れてみようと思います。